女子カイダン

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「……菊ちゃん、夫は別れたいんじゃないの?」 「まさか。奥さんにぞっこんですよ?」 「え?」  夫は、私に、ぞっこんですか?  意味がわからない。 「ケータイの待受は結婚式の写真ですし、職場の近くで撮ったプリクラも持ち物にたくさん貼ってますし、休憩時間なんて撮り溜めた奥さんの写真を眺めてニヤニヤしています」 「は、はぁ……」 「昨日なんて『この妻の寝顔に骨抜きになっちゃったんだよねー』なんて言って奥さんの寝顔見せられましたよ! ほんと、羨ましい! あの人、骨を抜いたら死ぬでしょ! あ、死んでくれたほうが都合はいいんですけど!」  ……はい?  あ、寝顔の写真はあとで消しておくにして……羨ましい?  菊ちゃんのテンションに、ついていけない。彼女が若いからというだけではなく、なんていうか、話の内容的に。 「だから、お願いをしに来たんです」  菊ちゃんの瞳は真剣そのものだ。 「ご主人と別れて、私と結婚してください!」  ……ええと、菊ちゃんが好きなのは、もしかして。 「えっ、私?」  予想外の展開に、体から水分が抜けてしまいそうだ。早めに水を補給しておかないと。マズい、マズい。  と、いきなり、菊ちゃんに手を包まれる。暖かい手のひらに包まれる。……暖かいものは、苦手。熱い人は苦手。熱気に当てられ、干からびてしまいそうになる。  たぶん、菊ちゃんは私の特性なんて知らないのだろう。 「奥さんのことは、私が必ず幸せにしますから!」  久しぶりにプロポーズされました。  目をキラキラさせた、熱い熱い女の子から。 ◆◇◆◇◆
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