女子カイダン

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「気骨が折れる女子会だったわ」  店を出て、階段を降り、白いものを組み合わせている夫へと歩み寄る。今日はメス猫が来ていないみたいだ。あの、夫を追いかけ回すのが大好きな泥棒猫。尻尾が二つあるのだから、今度邪魔をしたら一つ切り落としてやろうか、まったく。 「お疲れ様。お菊さんとは友達になれたかい?」 「友達……なのかな」 「良かったじゃないか。きみは職場に友達がいないって嘆いていたから。昨夜は後ろ髪を引かれる思いできみを見送ったけど、送り出して本当に良かったよ。ま、僕に髪なんてないけどね。ハハハ!」  落ちていた中指の末節骨(まっせつこつ)を夫に手渡して、「そうね」と短く答える。私の職場には女の子が――そもそも、話せる人がほとんどいないから、確かに菊ちゃんと話せたのは嬉しいことではあった。『天狗』の店長も店員も、喋るほうではないし。  ただ、不倫を持ちかけられるとは思わなかった。このことは、夫には内緒にしておこう。 「頭が空っぽ」だと思ったこととか、殴ろうとしたこととか、ちょっと疑っちゃったことも、内緒。ごめんね。 「お菊さんときみは相性がいいと思うよ」 「そう?」  指の骨をすべてくっつけて、骸骨の夫は、私の頭上を見つめた。 「だって、お菊さんが探している一枚を、きみが持っているからね」  そうかもしれないわね、と笑う。だから、菊ちゃんは私を好きになったのかもしれない。体だけ。  ただ、このお皿が彼女の求める「十枚目」でないことだけは確かだ。替えはないけど、そんな高いものじゃないだろうし。 「じゃあ、また。今夜は一緒に過ごそうね」 「ええ、そうね。行ってらっしゃい」  夫の真っ白な頬にキスをして、彼は「お化け屋敷」へ、私は「空想の生物館」へ、それぞれ戻る。  そんな、深夜の女子会談。 了
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