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しばらくすると、大きな金属のドームをのせた皿をワゴンに乗せて戻ってきた。
テーブルの空いたスペースに皿を置く。中は見えないが大きさからして結構な量だろう。
「ねぇちょっと、もう食べられないわよ」
結構な量を食べたのでお腹はいっぱいだった。
「ああ、これはさぁ、料理じゃあないんだ。今日使った素材だよ、君がお腹いっぱい食べてくれた肉、是非見て欲しくて」
男は口角を上げて、わざとらしい笑顔を作った。
「旨かったかい? 君の両親は──」
男が何を言っているのか分からなかった。旨い? 君の両親?
「ここまで肉を柔らかくするのは大変だったんだぜ。解体するのも一苦労でさ、あっ、後で浴室覗いてごらん、俺の苦労が一目で分かる」
そこまで言うと、男はドームの蓋を一気に開けた。
そこには、父と母がいた。
皿の上に生首がひとつ、右側が父、左側に母の顔。
無理やり半分に切って、無造作にくっつけたような形。顔中に血と、細かい肉片やらなんだか分からないものも付着している。
今食べたばかりの物が逆流し、その場で嘔吐する。全てを吐き出せと頭より身体が反応していた。
「なんて......ことを」吐物、涙、鼻水でくしゃくしゃになりながら掠れた声をだす。
胃の中をすべて吐き出し、充血した目で男を睨む。男は冷めた目でわたしを見下ろしている。
呼吸の仕方を体が忘れてしまったみたいに上手くできない。
無理やり息を整え、何とか声にする。
「君の......両親じゃ、ないでしょ......」
震える声をしぼりだし、叫ぶように言う。
「私達の両親でしょ! ──お兄ちゃん!」
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