第1章 再会と戸惑い

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「あ、あの、ルークさま……っ」 「そうだ、リア。俺のことはルークって呼んで? きみには、そうやって呼んでほしい」 「でも、ルークさまはお貴族さまで、私は奴隷出身。……いいえ、私はあなたの奴隷なんです。そんな恐れ多い呼び方はできません」  背に感じる冷たい床の感触。湯が冷えているせいで、肌に触れると体温を奪うのだろう。  無理だと首を振ると彼はどこか困ったように、それでいて愉しげに情火の炎をじりりとその瞳に宿して見下ろしてきた。  ぽたりと、彼の髪を伝って雫が落ちてくる。 「きみを買いはしたけど、別に奴隷だなんて思っていないよ。でも、そうだね。リアは俺の奴隷でいたいのかな……? それならば一生、俺だけの“愛しい奴隷(モノ)”としてそばに置いておくよ」  その方が逃げることもしないだろうし都合がいいと微笑む彼に、ぞくっと、恐怖を抱いてしまった。  こんなにも強く想ってもらえるのは嬉しいのだが、幸せだと思うのだが、どうしてか怖い。でも、そんなふうに思うなんてどうかしているとオフィーリアは彼の頬に手を伸ばした。 「……っ、そう、かわいいね。まあ、きみが奴隷でなくともずっとそばに置いておくつもりなんだけど。それと、リア。この状況下で“あなたの奴隷なんです”なんて言葉は、よくないよ。それは男の理性を崩すとても危険な言葉だ」  ルークの指の腹が、鎖骨をなぞる。いやらしく舐めるように触れられているせいで身体がびくっと跳ね、とても変な昂りかたをしてしまう。  下からせり上がってくるこの感覚はなんなのだろうか。ぞわぞわっと背筋が震えるのは不快感からではなく、まだ体験したことのない不思議な感覚からだ。   「ご、ごめんなさいルークさま」 「うん、さま付けもいいけどやっぱり呼び捨てのほうがいいな」 「で、でもそれはさっき……」 「きみは俺の奴隷なんだろう? だったら、主人の命令だと思えばいい。さあ、呼んで? 俺のことを、ルークって」 「んあ……ッ」  甘えるように耳元で囁かれ、耳朶を甘噛みされる。すると自分でも聞いたことがないような鼻にかかった声が漏れてしまい、オフィーリアは狼狽えてしまった。 「リア、呼ぶんだ」
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