第2章 二人の決意

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 たっぷりと間を置き神妙な面持ちで告げるルシアンに、ルークの表情が硬くなる。  先ほどまで舞踏会につけていくような目を覆う仮面の下からでも顔色が悪いことが窺えたのに、今はどうだろうか。まったくそんなようすは見れなくて、二人はオフィーリアを見やり目を眇めた。 「リア、きみはこのことを知っていたの……?」  いつになく真剣な瞳に見据えられ、オフィーリアはこくりと頷く。  一座に居たとき。高熱をだした子の近くで心の中に浮かんだメロディーに自然と歌詞がでてきて歌ったところ、その子供の熱が嘘のように引いたのだ。  これは偶然だったのだろうか。  そう思いしばらく経った頃、また別の子が発熱し同じように歌ったらその子の熱も下がって、オフィーリアはこの歌には、自分には不思議な力だあるのだと自覚した。 「じゃあ、このことは誰かにいった、のかな」 「いいえ、誰にもお伝えしておりません。……知っているのは私だけですわ」  なんとなく、なんとなく隠していたことで――いや、本能が教えてはいけないとずっとオフィーリアの口を閉ざさせていたため、そう伝える声が震えてしまっている。   「そう、それならよかった」  考え込むように唇をとんとんと人差し指で叩くルークに、オフィーリアの心がざわざわと騒いだ。  気味悪がられただろうか。  そう思った瞬間に、何故いままで誰にもいわないできたのか理解して、オフィーリアは恐怖に引きつった顔でルークを見下ろした。   「リア……?」 「あっ、ごめんなさい」  叱られる犬猫に似た動きで肩を跳ねさせ後退するオフィーリアは、ゆっくりと立ち上がったルークに腕を広げられうろたえてしまう。  首のあたりがすーすーして落ち着かない。  こういうときいつも自分の長い髪を撫でて気持ちを鎮めていたから触れないもどかしさに切なくなり、オフィーリアの視線が自然と落ちた。 「おいで。……リア、ほら、俺のところに戻っておいで」  戻って……? そういう彼の言葉はよくわからなかったが、拒絶されていないのが嬉しくて堪らず、オフィーリアの足はルークの胸へと向かい腕は当たり前のように彼の背に回って、小さな手で必死にぬくもりを手繰り寄せる。 「……かわいい」  そんな二人のようすにごほんと咳払いしたルシアンが、気まずそうにドアへと歩みを進めた。
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