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「冗談だ。顔を上げろ。一国の王であるお前がそんな事では示しがつかんぞ」
「は、はいいいい!!」
俺の一言に直ぐ様立ち上がると、今度は堂々と王座へと戻っていく。
全く、こいつが赤子の時にしかこの姿で面会はしていないが、以前アスカと来たときは国王らしく成長したなと感動を覚えていたというのに。
歴代の国王はもっと芯のある逞しい奴らだったが、こいつは駄目かもしれないな。
俺は一つ溜息を吐くと、アスカに説明するよう促した。
「お、王様。先程もお申立てしましたが、今回の魔王討伐の件はこのような形で落ち着きました。魔王を討つ、という事は出来ませんでしたが、私と使い魔契約を結ぶことにより鎮火に成功。討伐し、次の魔王を生み出すよりは遥かに良い選択だったと思われます」
恭しく頭を下げるアスカの表情には今猶戸惑いを隠せないでいるが、二年間の旅の中で覚えた丁寧な口調で話し出す。
それを聞く王は威厳たっぷりな面持ちで聞いている。しかし、地に着く足元が小刻みに振動している為、恰好が付いていない。
「な、成程。一先ずはよくやったと言いておこう。しかしっ! どんな事情があれど、今回儂が頼んだのは魔王の討伐! よってお前から提示された二つの条件は――」
「無かったことにするなどという阿保な事は口にせんよな?」
「ののの飲ませて頂きますっ!」
ひと睨みで綺麗なお辞儀を決めた国王に、俺はもう一つ溜息を吐いた。
その後、俺を討伐す件についてはアスカが目付役になることで終止符が打たれた。
条件を飲むといった筈の国王が、再びごね出したと際にはアスカに俺が何の理由も無く大陸を一つ消したと伝えた件を問い詰めた。結果先程と同じように土下座され、此方も程無く片付いた。
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