プロローグ

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「やっと――やっとここまで来たの」  目の前に佇む巨大且つ、悪趣味としか思えない骸骨で出来た扉を見て鼻息を荒げる。  私は自らの腰に手をやり、自慢の胸をこれでもかと張り上げ、これから起きる出来事に胸を躍らせつつ緊張に足を竦ませた。  唐突ではあるが、私の名前は御代飛鳥。いや、ここではアスカ・ミシロと名乗っている。  名乗り分けているって程のものではないのだが、名と苗を逆さにしているのには理由がある。  まぁ、端的に言えば“異世界召喚”。  まさか私がそんな目に合うなんて予想だにしなかった出来事であり、呼び出された当初は驚愕のあまり倒伏してしまったぐらいだ。  一応、地球に居た頃にそういう知識だけは無駄に漁っていた為に、その後の順応は早い方だったと思う。  倒れて二日後に目覚めた私は、まだ多少の混乱を引きずる中王座の前へと連行され、一方的に此方についての説明を受けた。  天界、地上界、魔界と三つに分かれたこの世界は、縦並びに均衡を保っていて、イメージとしてはコインを縦に積んで行ったような感じだと。  そして、現在の歴史が始まった約六百年前に三つの世界の重鎮達により、お互いの世界には何かしらの理由がない限り関わらない、といった内容の掟を定めたようなのだ。  その際場にいた者達の魔力を殆ど注ぎ込んだようで、その効果は現在から後数千年は持続されると言われているらしい。  しかし、何がきっかけなのかは定かでないが、魔界を統括する王がその掟を破り、地上界の大陸一つを一夜にして消し去ってしまったようだ。  ――それが三百年程前の話で、過去幾度となく私と同じように勇者を召喚したが失敗に終わり、魔界との睨み合いが現在まで続いているのだとか。  現実味のない話だが、あれだけ真剣な表情を向けられると信じざるを得ない。それに、向こうで読んでいた本で良くありがちな内容だ。この流れで行くと、どうせ断ったところで帰してくれないだろうし。  半ば諦めつつ大体を察した私は、王様に条件を提示し、それを飲めるのなら協力すると告げた。  “魔王を倒した後に私に干渉しすぎない事”“向こうへの戻り方をそれまでに調べ上げる事”  この二つだ。
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