謁見

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 まあ妥当な判断だと言えるだろう。寧ろ条件が緩い程だ。  俺は先程露店で買ったサラマンダーという何処にでもいる炎竜の、もも肉を焼いた串を片手に、王都最大の賑わいを見せるクリスタ大通りを勇者一行の後に着いて歩いている。  ここを行った先に巨大な冒険ギルドがあり、その先を更に進んだところに王城があると説明され、向かっているわけだ。  実はヴィスタリア王国内の地理ならほぼほぼ熟知しているのだが、言ってはいけないような気がした為口にはしなかった。  俺は串焼きを頬張り、久々に訪れたクリス大通りを観察しながら歩を進める。    巨大、尚且つ綺麗に大理石の敷き詰められた馬車専用道路が広がっているが、常から使用されているわけでは無いらしく、現在は出店、露店等が開かれ、常に人が絶えない。  所々で大道芸人達が己の磨き上げた特技を披露していたり、様々な呼び込みの声を聞いていると、まるで祭りにでも来ている気分になってくる。  ヴィスタリア城を目的に観光に訪れている他国民もチラホラと見受けることができ、ここ数年で更に賑わいが増したようだ。  やはり現ヴィスタリア王も、かなりのやり手のようだな。  俺は感心しつつ、それならば何故俺を殺す為に勇者を呼んだのか疑問に思った。  何故なら、この国を立ち上げる時に俺も一枚噛んでおり、初代ヴィスタリア王とは一緒に旅をした仲である。  城のに管理されている古い文献にも、俺の事を親友であると綴られている為、歴代の勇者たちは帝国から派遣されている事が殆どだった。 「んー……」 「なーに難しい顔してるの! 置いて行ってもいいのー?」  耳元で呟かれた声に少し驚き、手に当てていた顎を離す。
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