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俺は頬を伝う冷や汗をサッと拭い取り、あたかも動揺していない素振りで
「おおお俺は魔王だかなあ! 何でも見通す力がある!」
思わず上ずってしまった声に又も冷や汗がたらりと落ちて行き、俺はぎこちない視線をアスカにやる。
「……」
「……」
ジーっという音が出そうな程、ジト目で睨みつけられている。
これは明らかに嘘だと思われているぞ! このままで嘘つきのレッテルを張られ、夫はおろか使い魔としてすら見てもらえなくなってしまう!
俺はアスカの両肩に手を乗せると、
「今は気にしない方向で」
「馬鹿野郎なの」
そんな俺達を見つめるギールとイルミの視線には生暖かい何かが含まれている気がした。
俺の心配は無用だったようで、何事も無く城内へ入ることが出来た。
王への謁見は事前にアスカが魔力による念話にて許可を取ったらしく、そのまま王の元へ直行するとのこと。
全員の身に着ける衣服を見てもこれといった汚れは見られない為、取り敢えずは大丈夫……なのか?
少し礼節に欠けるような、と心配しつつも先導してくれるアスナに着いて行く。
城内は以前訪れた時と然程変わりがなく、通路に敷かれた赤い絨毯は常に新品同様であり、外壁と同じく内壁も真っ白で統一されている。等間隔に取り付けられた魔導照明により、常に一定の明るさを保たれていた。
周りに飾られた絵画や置物等は、そこまで値の張る物を置いていないようだ。
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