船上二十日間

3/7
107人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
 はぁ、何故こうも幼いのか。不覚にも可愛いとは思ってしまうものの、このまま見た目も中身を成長しなければ、将来何かしらの危ない事件に巻き込まれそうで怖いな。  そうは思いつつもついつい笑みが零れてしまい、そのまま抱き起す。 「もうそろそろ着くのだろ? なら船内で休んでおこう。向こうに着いてから忙しくなるからな」  泣き顔を隠すように蹲るアスカはコクリと肯き、肯定の意思を示す。  そのまま抱き抱え、船内へと歩を進めていく。  俺達が船に揺られる事二十日間、ようやく辿り着くようだ。  ――海上学園都市ネレウス。  四つのある巨大な大陸の中心海洋に人工的に作られた島だ。  そこには各国からの優秀な学生が集まり、最新の魔法技術を身に着けるべく日夜勉学に明け暮れているという。  というのも、この学園都市は外との関りを極力遮断し、転移も妨害してしまう強力な防御障壁を張っている為、中が実際にどうなっているのかは分からないのだ。  卒業していく学生たちから聞き出そうにも、皆口を揃えて「いい学校だよ」としか言わないようで、お手上げ状態だとか。  そんな場所へ旅立った俺達だが、ここに至るまでに物凄い苦労が待ち受けていた。  俺の身分証の制作、学園都市への入国手続き、溜まっていた勇者指定依頼の消化等々……。  船の出向予定が三日後だと、再度王城に出向いた際王に言われた時のアスカの怒りようときたら、凄まじいものだった。  大切に伸ばしてきたという髭を毟るは吠えるは城壁を壊すは、最後は王が土下座して収集が付いたのだが。  あれだな、依然先代の意思が脈々と言ったものの撤回だ。あれは血縁者じゃなくて側近たちに受け継がれているな、うん。  そうこうドタバタと三日を過ごし、ギリギリ間に合った船に乗船し現在に至る。
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!