上陸、海上学園都市ネレウス

2/11
107人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
「上陸なのーっ!」  長い海の旅の終わりを告げる様に、少し小さくなった汽笛が空気中に響き渡る。  雲一つなく、蒼く綺麗に染まった大空と澄んだ海。その境目は一瞬分からない程に同じ色をしており、小さな感動が俺の心を熱くした。  白く輝く海鳥達が己の喉笛を自慢げに鳴らし、悠然と空を渡り歩いているさまは、まるで冒険者たちを見ているように自由そのものだ。  去り行く蒸気船に「ばいばいなのー!」と手を振り続けるアスカをよそに、俺達の後方に広がる未知の世界に心を躍らせる。  海上学園都市ネレウス。  学校名にして、魔法武芸総合専門学園ネレウス。  その名に恥じる事無く、一面海に囲まれた孤独の地にポツリと存在する。  人工で作られた島にしては自然豊かで、蒸気船の寄せた桟橋を抜けた先は直ぐ海岸となっており、至るとことにシーヤと言われる海岸付近によく生息している木が植えられている。  海岸を抜けた先、一つ馬車道路を挟んだ向こうには巨大な森林が広がっており、そのずっと先から高い時計塔が立っている事から、森林を抜けた先に学園が存在するのが理解できた。  学園までは獣道を通るのではなく、予め道が作られてあるので遭難などの問題無さそうだ。  道路を過ぎた先の森林へと続く道手前には浮遊型魔導バイクが何台か止まっており、その傍に立て付けてある看板には、  “自由に使用して下さい。なお、破損や盗難の際には直ちに警備クローンが参りますのでご注意を”  との但し書きがされている。  恐らく前例があるのだろうな。  因みに“クローン”とは魔法で生成されたゴーレムの上位互換であり、大体が何かしら元となる人物が存在している。
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!