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中々頼もしい人だ。
恐らく、初期の頃からパーティーに加わっていたのなら、今頃姉と慕っていただろう。
私は其れに笑顔で返し、晴れた前方に視線をやる。
「っ!! 戦闘準備っ!」
開かれたそこには十数メートル離れた先に王座がポツリと設置され、其処に人影が存在した。
私は急ぎ身体強化魔法を重ね掛けし、その影響で若干青みがかった視界でそれを警戒する。
「……ちょ、ちょっと待てよ……? あいつ、寝てねぇか?」
「ふっ、俺に掛かればチョロイものよ。魔王何ぞこの黄金の右手――」
「あんたちょっと黙ってなさい」
最初に疑問の声を上げたのは接近戦のスペシャリストだというジークさん。
濁りのないブロンドの髪を短髪に整えた顔の彫りが深いイケメンさんだ。
顎には一つ切り傷があり、それが歴戦の戦士であるような雰囲気を醸し出している。
そんな彼に阿保みたいな返答をしたのは、場違いな恰好をしたポンさん。
濁った緑色の髪を綺麗なモヒカンにしており、半袖短パンという気が狂ったような装備でここまでやって来た人だ。
容姿は地球で凄まじい人気を誇る某有名RPGに出てくるスライムと瓜二つで、初めて会ったときは吹き出すのを我慢することで手一杯だった。
そんな如何にもギャグキャラ地味たポンさんをしばき倒したイルミさんが、前方を見て驚嘆の声を上げる。
「な、なんて無防備な……」
そんな二人の驚き様に疑問を感じつつ、反らしていた視線をもう一度向ける。
「は、はぁ?!」
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