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私はそう言って彼女から小銭を貸してもらい、お辞儀をしてからそれをお賽銭に入れた。そして二人で鈴を鳴らし、二拝二拍手一拝を行う。私の叶えることはいつも一つである。それを今日もまた拝むのである。
『奏ちゃんとこれからもずっと友だちでいられますように』、と。
今日は風が私たちを靡いていた。彼女に前に言われたことを思い出して言ってみる。
「祈ってる時に風を吹くと願いやすくなるのよね?」
「あぁ、そういえばあったね。迷信でお母さんが教えてくれたことだけどね。風によってお祈りが神様に飛ばされるのよ」
「うんうん」
私たちは自分たちが駆け上ったお賽銭の階段に座り込む。空に浮かぶ雲が葉の間から覗き見えている。
「雲を見つめていると時間ってゆったりしてるって思うよね」と私は呑気に言う。
「だねぇ……さて、帰ろっか?」
私たちは神社から出て道路に出る。小さめの神社なのに立派に立っているのはいつ見てもたくましいと思いながら彼女の方を向く。
「じゃ、またね?」と私は彼女に手を振る。
「うん、じゃあね」と彼女もまた手を振る。
私と彼女は神社を境にそのまま道路の方に行くのは私で、神社沿いに行くのが彼女というふうに別れて帰るのだ。神社から五軒離れたところに私の家がある。別れた彼女の家も同じぐらいの離れた軒数にあった。
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