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私のことを素通りして自分の席に着く。朝に顔を伏せたのは初めてだから仕方がないか。でも近寄って来てもいいんじゃないかしら。
私は小銭を借りていたことを思い出して彼女に返しに行こうとした。
なんて言えばいいんだろう。どんな態度をすればいいんだろ。
そう思いながら彼女の机がある前の方に私は足を歩かせる。
その足が重い。まるで鉄玉でも付けられたかのようだ。
財布から取り出した小銭を握り締めた手が痛い。まるでカッターナイフの小さく折った刃を握り締めてるように痛い。
何よりも心が痛い。口から心臓やら何やらが出てきてしまいそうだ。
「あっ、なっちゃ……」
私は借りた小銭を机に思いっきり飛ばないように指で添えながらも叩く感じで載せて教室を去る。また「うわ、何あれ」という声が周りから聞こえながら。
私はその後、個室に入りながら軽く嘔吐を起こした。
奏が悪い。なのになんで私が。あの子にだけ教えた秘密をあの子自身が破る?あの子が好きなのはいいけど、私にも言ってよ。あんなのはずるいよ。あの手紙であなたのことをどれだけ心配して走ったのに。
そう頭の中で考えていると、チャイムが鳴った。
「うぅ……」
どうやらまだここから出れそうにない。
しばらくすると、先生が来た。
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