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しばらくすると、多摩と密着しているせいか清明の感覚が通常より研ぎ澄まれていくのが実感する。
そして徐々に感じる。
この部屋には多摩と清明以外の第三者が存在している事を....
「....(おい!多摩!)」
清明は小声で多摩に声をかけた。
「(うん、私も感じてる。)」
多摩も目覚めていた。
どうやら一部の感覚を共有しているらしい。
煙みたいな存在だが確かに居る。
そしてベッドの二人をじっと見ている。
「(ところでお兄さん、私とエッチする?)」
清明の心の葛藤が多摩にだだ漏れだったらしい。そして多摩は少々発情気味だ。
『しないから!!!!』
清明が大声を上げた瞬間に煙みたいな存在(多分夢魔)が欠き消えてしまった。
煙みたいな存在は悪夢を見せに現れたのだが清明が声を荒げたので逃げたらしい。
「どこに行った?」
と清明は口に出したものの、多摩と清明の二人は感覚が鋭くなっているので、どこに逃げたか判った。
多摩が天井を指す。
清明も頷きそれに同意する。
清明は多摩の肩を抱き密着しながら清明の自宅を出る。
まるでラブホから出てくるカップルみたいだが、密着してないと夢魔がどこに逃げたか感じられないので仕方ない。
「あら~!加茂さんお早うございます。今日も早いのねぇ。そちら妹さん?」
マンションの二階の廊下を掃除していた、昨日犬の散歩をしていた近所のおばさんに出くわした。
どうやら今秋の掃除当番はおばさんらしい。
「お兄さんこの人だれ?」
多摩のぶっきらぼうの物言いに若干の嫉妬を含んでいる。
清明は(俺は歳上は趣味じゃない)との意味を込めて多摩の尻をつねった。
「一階に住んでる八雲さんだよ、一人暮らしの俺に時々おかずのお裾分けを頂いてるんだ。」
身内と勘違いしているようなので多摩を妹として紹介することにした。
八雲さんは多摩を見てニッコリ笑い、多摩の頭を撫でてポケットから飴ちゃんを渡した。
「お兄ちゃんと仲良しで羨ましいわぁ。私の娘と息子なんて仲が悪くてねぇ....」
八雲さんの世間話が始まった。
こうなると八雲さんの長話が止まらない。
夢魔はその長話の間ずっと上に移動しているらしい。
やっと八雲さんから解放された時、夢魔はマンションの屋上まで移動した様子だ。
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