【夢魔】

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「いくぞ屋上だ。多摩こっちだ!!」 このマンションにはエレベータが設置されているが、屋上へは外の階段でしか登れない構造になっている。 二人は外階段の所まで来てみると、案の定というか当然だが安全の為に施錠されていた。 「そうか、誰も来ないからこそ夢魔の住みかになってたのか。」 「お兄さんどうするの?」 良く見れば100円ショップにありそうな安っぽい南京錠なのでペンチで千切る事にした。 後で新しい鍵を閉めておく事にした。 もし管理人が屋上に用事があって鍵を開けに来たとしても鍵が錆びたか何かとしか思わず、違う鍵に変えるだけだろう。 「強行突発だ。」 清明は鍵を壊して、二人は外階段を駆け登った。 現在6階まで登った辺りだが、清明は走り疲れて普通に歩いて登っている。 多摩リバーサイドマンションは12階建。 「何か恐ぇな。」 階段は鉄骨でパイプ状に縦に仕切りがあり滑らせての転落とかは無いが視界が良好過ぎる。 「お兄さん頑張って!!」 多摩は余裕そうだ。 二人が屋上へと出ると給水塔とその管理室以外はフェンス等は無く、建物の縁は低く下を覗く気にもなれない程マンションは高い。 二人は自然と手を繋いだ。 人肌のぬくもりが高所の恐怖を少し和らぐ気がしたからだ。 「あの中央辺りだな....」 屋上の給水塔のやや左手に広い空間があり、その空間の中央付近が陽炎の様に空気が揺らいでいる。 「お兄さん、これこれ!」 多摩が指を狐の形を作る。 清明は多摩に習って狐窓から陽炎を覗いた。 「あれに間違いないな。それで、見つけたらどうすれば良いんだ?」 「さぁ?お婆ちゃんからは夢魔を見る方法しか聞いてないし。LINEで聞いてみる?」 「....その暇は無さそうだ!」 夢魔が隠れられないと悟ったのか拳を構えて殴りかかって来た! 『お兄さん危ない!!っキャアァァ!!』 『多摩大丈夫か!?』 多摩が清明の前に出てかばった為に夢魔の拳を貰い、給水塔へと叩きつけられた! 「....な、何とか。あいつ煙みたいなのに実体化してるの? ってお兄さん何ともないの???」 多摩が狐窓から今見てる光景は夢魔が清明を滅茶苦茶殴っているのだが、清明は何も感じていないらしい。 清明は多摩に駆け寄った時に狐窓を覗く事を止めているから夢魔が現在何をしているのかは解っていない。
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