【夢魔】

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気になった清明は指を狐窓の形を取ろうとした時、 多摩は清明の手を邪魔した。 「お兄さん!その狐窓から覗いたままだと殴られるよ!!」 つまり見ると殴られるが、見てなければあくまでも空気みたいな存在という事らしい。 「でもそれじゃどうにもならない。」 考えろ!!清明は自分自身に言い聞かせた。 今までに調べた伝承、玉藻の助言、昨日の儀式、そして多摩と気が繋がった右手。 それらの思考が目まぐるしく交差する。 そして一つの考えを導き出す。 だが試している時間は無いのでぶっつけ本番だ。 多摩は狐窓を見ながら夢魔の動きを牽制している。 持ち前の素早さで攻撃は回避し続けているらしい。 『多摩!狐窓を止めろ。』 『でも、それじゃ逃げちゃうかもよ!』 清明は多摩に向かって余裕の笑みを浮かべて「大丈夫。」とだけ答えた。 別に自信がある訳では無い。 ただ清明は多摩に対して格好付けただけだ。 「....俺が見る!!!!」 清明は左手で狐窓を作り覗いた。 黒い大男のシルエットが今まさに清明へと迫らんとしていた。 それを心配した多摩が清明に駆け寄る。 普通の生身の人間である清明よりは、多少頑丈な自分自身が攻撃を受けた方が良いからだ。 だが清明は駆け寄る多摩を制して大声で命令した。 『多摩ぁ!!俺を信じろ!!』 左手は狐窓のままで同時に右手に気を込めた。 多摩の体温が上がる。 そして清明の為なら死んでも良いという感情も沸き上がる。 だが同時に清明の命令ば絶対だと思った。 清明は右手を握る。 すると多摩はファイティングポーズを取った。 そして人指し指と中指だけを立てて夢魔に向かって切り裂く様に素振りをした。 するとどうだろう、現在は何も見えてないはずの多摩が夢魔の腕を切り裂いた。 今度は拳のままでアッパーをすると、多摩が夢魔の顎にアッパーを叩きつける。 「成功だ!!」 怒り狂った夢魔が多摩に向かって攻撃をするも、多摩は見えていないので夢魔の攻撃はすり抜けている。 それに比べて多摩自身は見えている清明に気で繋がっている為に攻撃が有効となるのだ。 こうなれば多摩無双である。 清明の操作で多摩は夢魔が消滅するまで攻撃を止めなければ良い。 かくして長年、清明を苦しめていた夢魔が消滅したのであった。
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