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マンションの屋上に静けさが広かった。
「この!お兄さんを苛めるな!うらうらうら!」
多摩は攻撃を止めていなかった。
見えていないので仕方ない。
「多摩!終わってるぞ。」
多摩は清明に言われて攻撃を止める、まだ右手に気が入っているので命令が絶対服従になったままだ。
「お兄さん凄いじゃん、さすが陰陽師の生まれ変わり!」
清明は多摩に誉められて悪い気はしないが、今回の事は生まれ変わりなどは関係が無く、全て玉藻が多摩を守る為に計画した事に過ぎない。
このまま、あの分厚い業の書の妖怪に関わるのかと思うと気が滅入る。
そう言えば業の書は?と思い多摩に確認させてみる。
すると昨日夢魔が書かれていたページが白紙になっていた。
「よし、お兄さん。私は早速お婆ちゃんに報告しな帰るよ。どうせLINEで報告しても嘘呼ばわりするだけだもん。」
そう言って多摩は外階段を降りていった。
清明も続けて屋上から降りる。
降りる途中で眼下に広がって見える多摩川の河川敷を爆走するギャルメイクした女子が爆走している姿が見えた。
「何かシュールな光景だな。」
と独り言を呟いた後に清明は、今日は夜に普通に寝たらどうなるかを楽しみに部屋へと戻っていったのであった。
翌日の早朝。
久し振りにぐっすりと眠り、夜更かしでは無い清明は河川敷で早朝の新鮮な空気を吸っていた。
「あらあら加茂さんお早うございます。今日も早いのねぇ!」
早朝の犬の散歩中の八雲さんが清明に挨拶してきた。
「そうそう聞いてよ加茂さん。昨日は何だか久し振りにぐっすり眠れたのよ!
最近目覚める時間が早くて主人から年寄りは朝が早いとか嫌味をいわれるし、いやになっちゃうわねぇ!
だけど今日は朝から家族みんな機嫌が良いのよぉ、珍しい事らしいもあるもんねぇ。
あ、オカズを余分に作っちゃったから後で届けるわねぇ。」
何故か上機嫌な八雲さんが清明に長話した後で犬の散歩を再開した。
噂によると今日を境にマンションの住民が夜に眠れる様になったとの事らしい。
「夢魔の被害者って俺だけじゃなかったのか....」
八雲さんが去った河川敷の剥こう側から、こちらへ向かって爆走してくるギャルが前方に見えてしまった。
どうやら、清明の厄介事は朝の爆走娘から始まるのであった。
妖夢陰陽記 【夢魔の章】完
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