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《ピピッ!ピピッ!ピピッ!》
ホイッスルを鳴らしながら建設現場の交通誘導員が
赤く光る棒を回しながら10トンのダンプを掘削現場に誘導している。
近くにはユンボで穴を掘り、ブルトーザーで地面を馴らしている。
《ガン!ガン!ガン!》
ボーリングが地面に穴を掘りその穴にコンクリートを流す。
ここは数年後に温泉付きニュータウンとしての分譲化予定地のモデルハウス建設現場だ。
工事の作業音は極めてうるさい。
工事現場の騒音は県条例に基づき、一定以上の音を出さない事になっているがどの会社も守っていないだろう。
業者には業者の事情がある。
工期が決まっているので予定通り進めるしか無いのだから…
そんなニュータウン開発現場より500メートル程離れた場所には昔から住んでいる農家の人達が住む集落から存在していた。
農家は朝早くに作業を始めて
だいたい午前十時頃には農作業から手を休めて寄り合いなどを開く。
農家の人々はおにぎりやオカズを持参して一ヶ所に集まり、雑談しながら作物の成長具合を報告しあったりする。
そんな中に一人の初老の男がお茶をすすりながら
遠くの工事現場を見ていた。
『どうした?田畑さん。別に珍しくも無いだろ?』
田畑さんと呼ばれた人に酒とツマミを持って来たのは近所に住む森本さんである。
『ん?ああ。だいぶ工事も進んだなぁと思うてな…』
田畑さんが現場を見てしみじみ言った。
『ああ、そうだな。』
森本さんは焼酎の入ったコップを口に運んだ。
更にもう一人田畑さんの近くに来た。
『便利になるのは構わんが、あまり賑やかは好かんね。』
オカズの入った重箱を持って来た森本さんの奥さんであった。
ここは奥羽山脈のふもとにあるとある農村。
最近の事情を反映する様に農家の高齢化が深刻問題となっている。
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