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ここは奥羽山脈の麓(ふもと)にある山村である。
最寄り駅の奥羽本線の奥羽駅からバスで約一時間。
バスの一日運行本数は三本。
《ぶぁぁぁぁ!!!》
その少ない本数のバスが砂利道に設置された錆びたバス停に二人の客を降ろして走り去った。
「うぇ、げほんげほん。
マジ信じらんない。髪の毛がほこりだらけよ~。」
Tシャツにデニムの短パンの女の子が
盛大に上がった砂煙に文句を言っている。
七色に決めたウィッグが土埃でラメが霞んでしまっている。
季節は初夏。
厚手のコーデを好む女の子は初夏の日差しに負けて、ギャルファッションはバスの中で着替えてしまった。
彼女は春日多摩。
通称(タマちゃん)
14歳の中学二年生。
『長い時間バスに揺られで…きぼぢ…悪い……。』
今にも吐きそうな男は加茂清明17歳の高校2年生。
遥か昔に活躍した陰陽師の生まれ変わりだ。
「ち、ちょっとお兄さん大丈夫?気持ち悪い?吐いたらすっきりするよ!」
多摩が清明を心配して背中をさする。
『悪ぃな、どうにも昔から乗り物に弱くて。』
それでも外の空気を吸ったら少しだけ気分が良くなってきた様子だ。
清明と多摩は、多摩の祖母である玉藻に(自分達でも勝てそうな弱い妖怪はいないか?)と相談を持ちかけると奥羽山脈の農村に行けと一声貰い、ここまでやって来た。
「むぅ…田舎ねぇ…コンビニ無いわよね…絶対に。Wi-Fiは無いかな?今月何気に通信制限ピンチなのよ。」
多摩が周りを見渡せば
右手に工事現場、左手には畑が広がっていた。
『お前は通信制限がピンチかも知れないが、俺は出席日数がピンチになりそうなんだが?』
先月の夢魔騒ぎから一ヶ月。
多摩は何かと相談事を清明に持ちかける様になったのだが、その度に学校を休む事になり
最近の学校での清明の立場はすっかり病弱キャラである。
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