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一方、田畑さんの家で寄り合いを続けている森本さんと田畑さん。
田畑さんは森本さんから今後について相談と言うか、既に決めていた事を田畑さんに語っていた。
『なんと!森本さん本気か?』
田畑さんは驚いていた。
何故なら森本さんは県の要請を受けて土地を売って現在建設中のニューダウンに入居を決めていたのだから。
「ああ、わしら夫婦ももう歳だからなぁ。年々農作業も体力がついていかんのよ。」
告げられた田畑さんも正直な話、薄々は解っていた。
もうかれこれ十年前に比べると農家の割合は半分以下になっている。
田畑さんはそんな元農家の人から農地を委託で作業を続けているものの、手が回らず荒れた田んぼも多い。
「....そうか、残念だ。」
そう言いながら、田畑さんと森本さんは軒先で焼酎をチビチビ呑みながら工事現場を眺めていた。
すると工事現場近くのバス停に、この付近じゃ見ない若い二人がバス停から降りて来た。
「....こりゃ珍しいな。誰かのお孫さんかねぇ。」
森本さんがバス停から降りた清明と多摩を見た。
何か古ぼけた本を片手に、次第にこちらへ向かって来ている事に気付いた。
田畑さんは、多摩に向けて厳しい目を向ける。
「ありゃ多分ワシに用じゃな。」
「へぇ~。田畑さんはあんな大きな孫がいなすったのかい?」
まぁそんなとこじゃ、と言葉を濁し立ち上がって田畑さんは来客を迎える事にした。
森本さん夫婦は田畑さんの来客を邪魔するのも野暮なので、寄り合いはお開きにして自宅へと帰っていってのであった。
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