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(ピンポーン!!)
田畑さん宅の呼び鈴が久し振りに鳴り響いた。
近所の知人は用があれば軒先から直接入って来るからだ。
「こんにちはー、大人しく私に従って頂戴~。」
田舎には似合わない派手なメイクをした女の子が引き戸をドンドンと叩く。
「お前はもうちょっと世間の常識を覚えろ馬鹿!」
高校生くらいの男が女の子を叱る。
「なんじゃやかましいの、ここは静かなんだから大声はいらんぞ。」
田畑さんは引き戸を開ける。
すると女の子がビシッと人指し指を突き付けて言った。
「やい、泥田坊。大人しく投降してここに拇印を頂戴!」
多摩はそう言って業の書に開かれた泥田坊のページを指した。
実は妖怪退治には二種類の方法がある。
まず一つは先月の夢魔の様に完全に滅ぼす方法。
そしてもう一つが、妖怪本人が抵抗の意志が無く玉藻に帰属する意味で業の書のページに触れる調服法がある。
後者は敵対心や従う意志が無い場合は、無理矢理触らせても調服にならない。
「はぁ、あの婆さんはまだ無駄な抵抗をしとるのか?あの悪名高い玉藻御前が神上がり出来る訳が無いじゃろう。」
田畑さん(泥田坊)は言われた通りページに触る。
が、業の書には何の反応も無かった。
「泥田坊!あんたは敵だわね!」
『いい加減にしろ!!(ポコン!!)』
黙って聞いていた清明は多摩の失礼な対応に代わって謝罪した。
「いやほんとごめんなさい。このアホは後で叱っておきますんで。」
『ちょっとお兄さん、ここで舐められたら試合終了だよ!!』
「お前の目は洞穴か?どう考えても俺達が敵う相手じゃねぇよ!」
清明は密かに狐窓で見た泥田坊は先月の夢魔どころじゃない妖気の持ち主であった。
幸いな事に話しが通じそうなので、会話による接触に切り替えたのだ。
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