【泥田坊と山神】

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「あのなぁお嬢さん、ワシゃ別に敵対するつもりは無いが従うつもりも無いぞ?そりゃワシも昔は畑を大事にしない人間を喰らったりもしたが、今の時代はそんな余裕もないわい。」 ここに来る途中で二人は荒れた畑を見ているだけに説得力がある。 「うん、解った。じゃもういいや。お兄さん帰ろう。」 多摩はあっさり引き下がった。 清明との約束で妖怪退治に関してはとにかく無理をしない事を約束しているからだ。 そんな訳で泥田坊に挨拶して帰ろうとした二人を泥田坊が止めた。 「お嬢さん達、今日のバスはもう無いぞ?」 なんせ一日三本しかバスの便が無く、先程の二人が降りたバスが最後の便なのであった。 「マジ?奥羽駅って遠かったっけ?」 「30キロくらいかのぉ。」 多摩の脚なら一時間程度だが.... 「一応言っておくが俺は30キロ歩く気力は無い。」 「なんじゃお前さんは仲間じゃないのか?」 泥田坊の言う仲間とは妖怪という意味だ。 「俺は普通の人間です。訳あって多摩に手伝っているだけです。」 「なるほどのぉ、まあ妖怪次第だが人間の方が話しが早い場合もあるわな。」 泥田坊は二人に泊まって行く事を勧めた。 そして泥田坊に甘えさせて貰う事に決めた清明であった。 「なんなら私がお兄さんをおんぶして帰ってもいいんだょ?」 「却下だ!」 中坊の女の子におんぶされて駅に向かう姿を想像した清明は男としてのプライドがそれを邪魔した。 そして泥田坊に案内された部屋は電気こそあるものの、テレビもラジオも無い布団だけの部屋であった。 これはかなり退屈である。 幸い携帯の電波は来ているのでテレビはワンセグで見られるが、別に観たい番組がある訳でもない。 こうなると寝るしかない。 最近は快適快眠の清明は泥田坊の用意した布団に潜り込んだ。 そして多摩がいっしょに清明の布団に入る。 「....あのな、隣にお前の布団があるだろ?」 「いやいや、お兄さん。気のチャージだよ。」 そう言われたら仕方ないので清明は多摩の背後から抱き締めた。 実は気のチャージは口実で多摩は清明に背後から抱き締められると、ものすごく気持ちが良いのだ。
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