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《ドグォォン!!!!》
まだ日が登りきらない早朝に清明と多摩は、けたたましい轟音と共に泥田坊の家が揺らぐ程の衝撃を感じて目が覚めた。
二人は急いで居間の方へ駆けつけると泥田坊が工事現場に向かって厳しい顔をしている。
「泥田っち、どしたの?」
「変な愛称を付けるな。お前さん達はここで隠れてろ。人間どもがいつかやらかすと思っとったんじゃ!」
それだけを言い、泥田坊は工事現場へ向かって走っていった。
いや、走るスピードを維持したまま下半身が畑の泥と同化して、まるで足の無い上半身が畑を進んでいる。
多分あれが正体を現した泥田坊なのだろう。
程なくして工事現場のど真ん中に泥の怪物が口から泥を吐き出し何かを攻撃しはじめた。
「ちょっ!泥田っち工事現場の人間を殺しに行ったんじゃね?」
確かに見ようによってはそう見えるが、清明には少し違って見えた。
どちらかというと人間を避けて泥を吐いてるからだ。
二人は泥田坊を追って急いで工事現場へ急行する。
5分程走っただろうか。
工事現場の入り口から現場へと踏み入ると泥の怪物が捨てた砂利や土くれの塊に向かって泥を吐いていた。
怪物は明らかに泥田坊と判るが砂利や土くれの塊は工事で掘った土砂の塊だと思った。
だがその土砂はみるみると膨れ上がり、やがて土偶の様な人形へと変貌する。
『《ばかやろう!危ないから去れ!》』
多摩と清明の頭に直接響く声は泥田坊からの警告だろう。
その警告と一緒に泥田坊から吐かれた泥の一塊が多摩の足元へ落ちた。
「熱っ!この泥超熱い!」
清明はと言うと工事現場の入り口に見知らぬ人物が視界に入った。
「まずい!一般人みたいだから避難させてくるよ!」
清明は工事現場の入り口へと急いだ、その背後には多摩が付いて来た。
『おじさん危ないよ~。』
多摩の緊迫感の無い注意を無視して泥の怪物である泥田坊を見て呟いた。
「田畑さん....無茶だよ。」
清明はこの人物が泥の怪物が泥田坊だと知っているのを察した。
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