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《キキィィ!!!》
激しくアスファルトを擦るブレーキング音。
《グォォ………》
続いてエンジンとタービンが悲鳴をあげる様に回転数が上がり、そのエキゾーストノートが道端のギャラリーを魅了する。
二台のスポーツカーが峠の坂を平地の如く軽やかに登って行く。
ここは群馬県の県境に存在する碓氷峠。
十年前くらい前の碓氷峠は漫画やアニメの走り屋漫画の影響もあり、トリッキーな道路が続くので調子に乗った若者のスポーツカーが腕試しで走っていた。
最近は警察の取り締まりも強化されて暴走行為もずいぶん減ったものだが、それでも時々こうして腕試しを強行する血気盛んな者達が後を絶たない。
そして、その夜もアスファルトの焦げる臭いが立ちこめていた…
『…スゲー…怖くねぇのかな…』
『あの車カッチョ良くね?なんて車?』
『馬~鹿、エボ知らねぇのかよ!』
走り屋のギャラリー仲間が先ほど目の前を通った車の話題で盛り上がっていた。
だが五分もすれば盛り上がっていた気分は覚めてしまう。
車が去った後の峠の静寂が彼らを現実に引き戻すからだ。
それは余韻なのか、はたまた夜の帳の恐れなのか。
『あ~あ、終わっちまったな~。また来ねぇかな~。』
ギャラリーが撤収を始めた時にはるか前方で突然事件が起きた。
ギャラリー達の居る場所より少し高い場所で激しい炎が吹き上がったのだ。
『お、おい!やべぇんじゃね?』
『事故ったか!!』
ギャラリー達が現場に殺到する。
先ほどスポーツカーの1台がガードレールを突き破り五メートル位下に激突していた…
『誰か!消防車だ!』
『もう連絡してる!』
『けど…嫌なもん見ちまったな…』
『…ああ…』
スポーツカーのドライバーは落下の衝撃で外に投げ出されていた…
手足が嫌な感じに曲がっており、頭部があるはずの首の上には..
…何も無かった…
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