終りのその後…

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 手を通して男の記憶を読んだケイは仕事の始まりをマークに叫んで伝える。 「始めるって何を?! と言うか、その情報はどこで聞いたんだ! 答えろ!」 「アンタはもう、そんな事気にしなくて良いんだよ。直ぐに部屋のことは忘れるから」 (デリート開始)  鋭い耳鳴りと瞼裏に火花が散る。  歪み擦れる視界のそれはテレビのザッピングにも似ている気がする。 ――ほぉら、見えるかい? 君の手が全部ナカに入ってしまったよ……そのまま僕と握手しよう。  鼓膜を舐めるようなぬめった男の声と、子供とも女ともつかない無数の悲鳴、嗚咽、生臭い匂いが鼻腔にこびりつく。  この男の見た光景だ。  能力ちからを通して脳裏により鮮明に流れ込む悍おぞましい光景に胃の中がひっくり返りそうになるが、呼吸を整えて堪える。 「はぁ?! ?!……ん゛あっ! あ゛あ゛あ゛あ゛あぁ……」  脳の神経回路を読んで目的の情報を的確に消すこの作業に追体験強制させられる。  慣れるしかないとはいえ、慣れるはずもない。  リンクした情報に意識を持っていかれそうになるのを踏みとどまり耐えるのが一番大変なのだのだ。  慎重な作業にケイの額が薄らと汗ばむ。  関係無い記憶を消すとマークの作業に支障が出るから、消す時は素早くとも丁寧に、正確に。     
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