帰る森はない。

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『そうねー。故郷にいた頃が懐かしい……私たちの方がずっと長く生きてるのに……人間ときたら敬いも全く無いんだから。それにしてもエルフですら人間に頭を下げないといけないとか、本当……嫌になるわ……』 『『はぁーー……』』  今度は2人で盛大に溜息を吐いた。  しかしそこで。 「リネアさーん、9番の席から御指名です」 『あっ、呼ばれちゃった。店のルールであまり長時間同じ席にいられないから行ってくるわね』 『そうか。ではまだオーダーをしていなかったので、ジュースでも一杯飲んでから僕は帰る』 『そう。じゃあ、またね? ……うーん、また来たらよろしくね♪ 少し気が晴れたわ。有難う……』  リネアは「また来てね」と言おうとしたようだったが、妖精族がこの手の店にあまり来ない事を思い出した様で、そう言って忙しそうに飛び去っていった。 (ううむ。また来ると言いそびれた……まあ、普通にまた来れば良いか)  そしてスレイはマンゴージュースを注文して飲み干すと、会計して店を出た。  お会計はスレイが思っていたより高く、下手にまた来ると言わなくて良かったと思い直した。  こうして人と混じって暮らす事になった妖精達は、苦労しつつも新しい生活を送っているのだった。 [続く]
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