第2章 昔

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第2章 昔

 8月も半ばが過ぎ、当時の俺はひどく時間を持て余していた。 宿題は既に終わらせた。沖縄旅行から帰り、あとは始業式を待つばかり。 もう一つくらい思い出を作ってもいい、そう思っていた頃に携帯にメッセージが入る。 悪友の渉からだ。 「あの神社に行こうぜ!二人でさ…」  神社、というのは渉の家の近所にある廃墟の事だ。 それは小高い山の上にあり、麓にはそれなりの大きな神社がある。 今なら、何か縁があるのだろうと関連付けることもできたが、当時の俺にそんな知力は無かった。 背の高い樹木に囲まれた空間の中、 鳥居は撤去され、敷石も喪われているくせに、拝殿だけが諦め悪く年月に抗っている場所。 「いいけど、なんかあった」 「お前が旅行行ってるとき、裏に洞窟見つけたんだよ!なんかありそうだろ!」  渉はお宝が眠っているかもしれない、と息巻いていた。 まさか、と思いつつ、時間潰しに丁度いいと、俺は渉と共に廃神社に向かう。 寂れた神社の裏では、確かに洞穴が口を開けていた。 距離を縮めた俺は湿った闇が怖かったのだが、渉の前で醜態は晒したくない。  渉が用意していた懐中電灯を頼りに、2人で10分ほど真っすぐ進む。 その時、目の前に一本のナイフが現れた。果物ナイフが垂直に刺さっている。 近づき、ナイフを挟むように俺達はしゃがんだ。 「おい、やべーよ!聖剣だよ!聖剣!」  渉は俺に懐中電灯を渡し、ナイフの柄に手を掛ける。 10分ほど格闘するが、びくともしない。諦めた渉は俺を伴って、更に奥へ進む。 突き当りで右に曲がり、さらに10分ほど進むと、洞窟の行きどまりだった。 「は…?」  俺達は言葉を失い、立ち竦む。 大量のナイフが、地面を埋め尽くしていたのだ。 真新しいものもあれば、一世紀は過ごしているであろう風合いを帯びたものある。 怖くなった俺達は踵を返す。その途中、渉が悲鳴を上げた。 「なんだよ!?」 「こ、これ……」  円形の光が岩肌を撫でる。 渉は落ち着いて、ゆっくりと電灯を動かし、目的のものに照明を当てた。 ナイフが抜けていた。頼りない刀身には、赤黒い液体がべっとりと付着している。
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