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「さすが縷々夢家の人間だ。普通なら即死のはずだが…………。不思議なものだ。出会わなければ、存在しなければ、ここに来なければ、あんなことをしなければ死ぬことはなかっただろうに」
「死なせないお礼に実験体になるんじゃないの? そんなのはゴメンだわ」
「これも使命だ。どのみち縷々夢家にその待遇はなかっただろう」
「そう…………」
抵抗する気力はもはやなかった。
十六夜は静かに目を閉じ、残された家族を、特に妹のことを考えた。
考えているうちに事は既に終わっていた。
男は女の胴体と頭部を斬り離したあと、念入りに死を確認した。
やがて満足すると胴体に刺さっていた異物を抜き、後始末は他に任せてその場を後にした。
住宅街のど真ん中で行われた所業にも関わらず、家から飛び出る人も、サイレンの音もなく、道路に人気も車の往来もない。
残された十六夜は、目を閉じたまま安らかな表情で地べたに横たわっていた。
が、やがて塵と化して自然へと還っていった。
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