序章

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序章

こちらの世界に来てから縷々夢十六夜(るるむいさよ)は、死について時折夢想するようになった。 それは今まで思考する必要のない無駄な時間、恐怖からくる不安神経症のようなものだと思っていた。 しかし現実は違った。 夢の中の世界ではあるが、死は確かにそこに存在していたのだ。 「痛い…………けど、これが死ぬってことなのね」 十六夜は溢れでる血で出来上がった水溜まりを、現状を俯瞰(ふかん)するかのように眺めていた。 痛みはそれほどでもない。 身体も動かそうと思えばできるだろう。 背中から腹部にかけて斜めに大きな異物が刺さっているが、ぎこちなさを除けば支障はないだろう。 ただし、目の前の男が見逃さないかぎりは。
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