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Aくんはひきこもりである。
忘れもしない、去年のクリスマスの十日前、つまり十二月十四日にAくんはインフルエンザだと診断された。
小学校はしばらく休ませてください。
お医者さんはお母さんにそう言った。
しばらくって、いつまでだろう?
大人の言葉って便利だなあ。
Aくんは熱くてだるい頭のなかで、しばらくがずっと続けばいいのに、と思った。
図工がちょっぴり苦手なAくんだったが、算数も国語も理科も社会もテストはいつも百点満点で、かけっこも一番でさかあがりだって得意だった。
お友達もたくさんいたし、担任の先生もべつに嫌いじゃない。
だけど、Aくんは学校がどうしても好きになれなかった。
お母さんは子どもが家にいると自分の時間がなくなるなんてぼやいて、Aくんが小学校を休むのを嫌がったけど、インフルエンザなら仕方ない。Aくんもおとなしく寝込んでいたから、お母さんは安心してパチンコに出掛けた。
長引いたインフルエンザのお休みはそのまま冬休みに突入して、Aくんはクリスマスもお正月もできるだけ自分の部屋で過ごすようにした。そうしていたら、なにも言われない事に気がついたのだ。
春がきて、夏がきて、秋がきて、もうすぐまたクリスマスがやってくる。
お父さんは残業に忘年会にサバイバルゲーム、お母さんはパチンコや女子会やポールダンス教室で、二人とも大忙しだ。
AくんはiPadのYouTubeを一旦止めて、ベッドから起き上がった。
朝ごはんなのか昼ごはんなのかを考えなければ、またもうひとつ自由になれた気がする。
一人きりのリビングで、Aくんのために用意されている冷凍パスタをチンして食べる。
食べ終わったら、ちゃんと洗って片付ける。
Aくんは銀のフォークをピカピカに拭きながら、YouTubeを思い出した。
やかんを三回こすったら精霊が現れて、なんでも願いを叶えるという、素人が投稿したにしてはよくできたCG映像だ。
視聴回数だってあっという間に大台に乗った。
ユーチューバーになるなら、ああいうクリエイティブな動画をあげていきたい。
Aくんの将来の夢はユーチューバーである。
それがダメなら、プロゲーマー。
ボワン!
漫画家の道は考えてなかったけれど、オノマトペをつけるなら、たぶんそれ。
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