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 ……いったい、何の話を……。  ブツブツと呟いていた志岐さんが顔をあげた。その表情を確実に捉えた俺は思わず息が止まってしまう。花火に照らされて見えたのは、昨日の朝と同じ、哀しそうな志岐さんの顔だった。  言葉を無くしたまま志岐さんと見つめ合う。すると、志岐さんの表情が急に歪んで、 「今、俺の顔が見えただろ」  ――笑ってる。だけど、これはいつもの笑顔とは違う。  志岐さんは楽しそうに笑った。でも、それはとても投げやりで、何かを諦めたような虚しさが漂っている。ひとしきり笑った志岐さんは、 「俺と一緒に来たほうがいい。どのみち、寿明はカズトを捨てる」 「捨てるって……」 「あいつは昔から恋愛に潔癖なところがある。恋人を作るとそいつに一途になる。そして同じように相手にもそれを求める。あの写真を俺が寿明に送るとは思わなかった?」  あの写真。俺が酔って志岐さんにキスした写真を村瀬さんに見られた?  カッと頭に血がのぼった。志岐さんから離れようと力任せに暴れる。口をついたのは疑問の台詞ばかりだ。 「なんでっ。どうしてそんなことするのっ」 「カズトが俺になびかないからだよ。許せないじゃないか。この俺が落とせない人間がいるなんて」 「そんなの傲慢すぎ! 誰もがみんな、志岐さんのファンでもなんでもないよっ」  大暴れしているのに志岐さんはまったく動じた様子もない。むしろ、俺の行動を面白がっている。 「寿明は自分以外に目を向けたカズトを許さない。でも糾弾することもないだろうね。あいつは一気にカズトに興味を無くす。そうしたら、それまでのことはまるで初めから無かったように振る舞うだろう。そのとき、カズトはどうする? またひとりぼっちになってしまうね。やっと表情がわかる人間に会えたのに」
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