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 いきなりザァッという音がして頭上から冷たい水が降りかかってきた。わあっ、と思わず大声をあげたら、その声はどしゃ降りの雨のような音とともにワンワンと周囲に反響した。  あまりの水圧に息が出来ない。口を開けて空気を取り入れて薄目を開けたら、予想に反してとても明るい光が飛び込んできた。  あれ? ここは地下なんだよね?  牢屋なんだから、ゴツゴツした岩で囲まれていて、じめじめと湿気のこもった暗いところじゃないの?  頭上から降る水も冷たかったのは最初だけで、今は温かなお湯に変わっている。村瀬さんの背中から下ろされて、ぺたんと座り込んだのは真っ白なタイルの上。目の前にはピカピカのカランに、奥の壁側にはお湯が張られていない檜造りの浴槽もある。  ここはどう見てもきれいで広い浴室じゃん。もしかして、古い座敷牢も今では現代風にリノベーションなんてするわけ? 「少しは頭がはっきりしたか?」  制服のまま、シャワーヘッドから自分もお湯をかぶる村瀬さんが、座り込む俺に話しかけた。 「……ここって離れの地下にある座敷牢じゃないの?」  は? と村瀬さんが怪訝な顔をしてシャワーのお湯を止めた。 「また突拍子もないこと。座敷牢って(なん)なん? うちにそんなもんがあるわけがないじゃろ」 「……でもあるって聞いたよ。前にそこに閉じ込められたって……志岐さんが」  驚いたように目を見開いた村瀬さんは、すぐにキュッと眉間に皺を寄せるとおでこに右手を当てて、はああ、と盛大にため息をついた。 「ほんまにあの人は、昔からいらんことばかりしよってから……」
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