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「本当はもっときちんとした形で言いたかったんだが、これも俺たちらしくていいか」  村瀬さん、広島弁じゃない。なんだろう、すごく緊張してきた。  思わず村瀬さんの手を握ってしまった。その俺の手を大きな両手がやわらかく握り返すと、村瀬さんは手の甲にそっと唇を押し当てた。  ふわあ。なんなのこれ。まるで童話に出てくる王子さまみたい。真っ赤になっている顔を隠したいよ。  きょときょととさ迷っていた視線を捉えられた。力強い眼光に目を逸らせない俺に、村瀬さんは静かに言った。 「愛しているよ、カズト。俺と一緒になってくれないか」  たったそれだけのシンプルな言葉。なのに耳に届いた単語の意味が理解できない。 「愛しているよ」は、わかる。でも「一緒になってくれないか」の意味は?  脳の処理が追いつかなくてフリーズしていると、 「あのな。これは俺なりのプロポーズなんじゃけど」  ああ、なんだ。プロポーズなのか。  ――――って、プロポーズ!? 「ぇぇえええっ!?」  俺の驚愕の叫びが広い浴室の壁にカンカンとあたって跳ねてる。残響が落ちつくまで村瀬さんは苦笑いの顔で待ってから、「そんなに驚かんでもええじゃろ」と今度は少しふくれ面になった。 「だってプロポーズって結婚してってことでしょ!? 俺だよ? 俺、男だよ? 俺でいいの? 俺なんかがお嫁さんでいいの?」 「俺なんかが、じゃねえわ。おまえがええの。カズトじゃけえ、ええんじゃ」  見上げる村瀬さんがにっこりと笑った。うわ、反則じゃん。その笑顔……。
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