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俺は正座をし直して少し後ろにずり下がると、床に手のひらをついて、
「ふつつか者ですけど、よろしくお願いします!」
「カズト、ふつつか者って……」
深くお辞儀をした俺の頭の上で村瀬親子の笑い声が響いた。
灯り消すぞ、と村瀬さんが言って部屋の灯りが落とされる。俺の部屋の床に敷いた布団にがさがさと村瀬さんが入った。
俺も自分のベッドに横になったけれど、妙に目が冴えて眠れそうにない。
俺の部屋で村瀬さんが寝るなんて初めてだ。おじさんとおばさんが訪ねて来る前に村瀬さんがしてくれたことが思いだされて、顔が赤くなるのがわかった。
二週間振りだったのにな。
そう思うとなんだか体がさわさわしてくる。
ダメだって。隣の部屋にはおじさんとおばさんが居るんだから。
でもダメだと思えば思うほど、体がどんどん火照ってきて堪らなくなっていった。
「……村瀬さん、起きてる?」
蚊の鳴くような声で問いかける。だけど、小さな灯りの下の村瀬さんからは返事がなかった。
寝ちゃったのかな?
俺はそっと自分のベッドを脱け出して、床に敷いてある村瀬さんの布団の中へと潜り込んだ。こちらに背中を向けて横になっている村瀬さんの体に、ピッタリと引っつく。温かい背中に頬を寄せると、
「……なんしよるんじゃ」
ごそり、と村瀬さんが仰向けになって左腕を俺の頭に廻してくれた。村瀬さんの胸に顔を寄せると肩を抱いてくれる。
「……今夜はダメで」
「うん、わかってるよ。さすがに俺でも隣におじさんたちがいるのに、エッチしてとは言わないよ」
少し残念な気持ちで言うと、村瀬さんがふふっと笑った。
大きな手が俺の髪を優しく梳いてくれる。こんなとき、下顎を撫でられてゴロゴロと喉を鳴らす猫の気持ちがよくわかる。
ダメとは言われたけれど、それでも俺は熱が籠った下半身を村瀬さんに押しつけて、今夜はそれで我慢することにした。
「村瀬さんっておじさんとおばさんのどっちに似ているの?」
「親戚には親父によう似とると言われるな」
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