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 加藤さんは俺より二つ年上の料理人の最年少だ。俺がバイトに来た当初は年が近いせいもあって色々と話しかけたりしてくれたけど……。 「……また、なにかやっちゃったんだよな、俺」  明里さんの言葉を思い出して俺はため息をついた。 「こんなもんかな」  風呂掃除を終えて流れる汗を拭いながら浴室を見渡した。  うん、完璧。最初に比べると格段に手際も仕上がり具合もよくなっている。始めた頃はやらされてる感がアリアリで全てダメ出しされたけれど、今ではお客さまに気持ちよく使ってもらおうという心の余裕まで出てきた。  前に新館の風呂も数人がかりで洗ったけれど、あっちは広いし露天風呂もあるしで凄く大変だった。本館の風呂はこじんまりとしていても、とても趣があって俺はこっちの方が好きだ。  まあ、初めて村瀬さんに素っ裸を見られた想い出の場所でもあるからね。  汗と水でべちゃべちゃのTシャツを替えたいと思っていたとき、脱衣場にパタパタと小さな足音が響いた。 「カズトいたーっ!」 「いたーっ!」  わんわんと浴室内を共鳴した声に耳がキーンとなる。きゃあきゃあと騒ぐチビッ子たちに、 「ミーちゃん、トモくん。ちょっと静かにして」  浴室から出るとふたりのチビッ子に両手を掴まれる。 「カズト! 海いこっ」 「海! 泳ぐ!」 「ええっ? ふたりとも小学校のプールで泳いで来たんでしょ?」 「行く! 貝殻ひろう!」 「夏休みの工作の貝殻!」  ふたりとも興奮気味で俺の話なんか聞いていない。その時、 「こらっ! あんたたち、またカズトくんの仕事の邪魔をして! それにお兄ちゃんって呼びなさい」  掃除チェックに来た明里さんがチビッ子たちに声を張り上げた。ほんの少し静かになったチビッ子と手を繋いで若女将チェックを固唾を呑んで見守る。洗面台、脱衣場の棚から籠、浴槽の隅まで確認した明里さんが、 「はい、合格。これで今日の主な仕事は終りじゃね。団体さまもないし休憩していいわよ」  胸を撫で下ろした俺の両手を引っ張って、きゃあ! とふたりがよろこんだ。
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