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「それでは、今から夢を移します。ここに横になってください」
奥にあったベッドに案内され、言われた通りに寝転がった。
「それじゃあ、目を閉じてください。いいというまでは開かないでくださいね」
目を閉じると恐怖と期待感でいっぱいになる。
「それでは始めます」
その言葉と同時に何かが入り込んでくる感覚がした。
するとまぶたの裏がスクリーンのようになり、記憶が映し出された。
『あなたの夢は特別だから……ちゃんと叶えて……』
頭の中で再生されたのは、母親の声だった。
ずっと忘れていた。
夢は大切なものまで奪っていたんだ。
自然と涙がこぼれ落ちていく。
「これは俺の夢だったんだ」
俺の夢は、誰かを助ける、手助け、人助けをするというものだった。
「そうですよ。対価はあなたに任せます。だから、精一杯生きてください」
「はい。いつかお礼をしにきます」
起き上がると世界が変わって見えた気がした。
無くしたものを見つけたからか。
もしかしたら、ただの思い込みかもしれない。
それでも今は前を向いて進んでいける気がした。
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