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この世界で夢を見ることは許されていない。
ただし、一人一人に役割が与えられている。
それを果たすこと。それが夢を叶えることになっている。
「この書類、明日までにまとめといて」
その道から離れる方法もある。
対価を払って夢を買うか、夢を手放しお金を得るか。
後者に待っているのは、地位の低い人生だ。
そして、使い捨てられていく運命だった。
俺もその一人。
中学に上がる前に両親を失った。
交通事故で。
だからお金が必要だった。
今は何もかもなくなっていた。
もうこの世に希望なんてない。
同じ毎日の繰り返しには飽きあきしていた。
夢がない者の現実。
会社を定時に切り上げ、ある場所へと向かった。
夢の取引所、この世界でそう呼ばれていた。
夢の売買が行われている。
対価……お金はない。
俺にあるものは、この身体、命。
それで最後ぐらい、いい世界を見てみたい。
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