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仕事を終わらせ午後8時前、荒木は居酒屋に着いた。店に入ると、既に何人か集まっていた。
「荒木ー、こっちだこっち! 」
手招きで荒木を呼ぶのは、同級生だった安田。ムードメーカー的存在の男だ。今回招集をかけたのもこの男。
「お前ら来るのはやいな」
荒木はそう言いながら、恋人でもある美保の隣に座る。
「まーな」
ぐるりと見回すと恋人の美保、一つ下の中島康史、安田勇太、そしてサークルのアイドル的存在だった松村恵美だ。
「それで、なんで集めたの? 」
恵美は焼き鳥を頬張りながら、安田に聞いた。
「最近よく行くコンビニで、変なの見かけるようになったからな。一応俺らオカルトサークルだったし、なんとなくな」
「なーにがオカルトサークルだよ。心霊スポットなんか、一度も行ってないくせに」
「あたしらオカルトサークルって、ただ名前だけで心霊スポット調査って名目で、いつもここ来てたじゃん」
「まぁまぁ、固いこと言うなって。とりあえず話を聞いてくれ」
安田は無理やり話を始めた。
「俺がよく行くコンビニって中年ばっか働いてて、今ひとつ活気に欠けるような店だったんだけどよ、数日前からハキハキいらっしゃいませっていう奴がいてさ、新入りが入ったのかと思ったら客だったんだよ」
「それって、ちょい禿げた小太りのおっさんじゃなかったか? 」
荒木がそう言うと、安田は首を横に振った。
「いや、若い兄ちゃん。俺らよりちょい下くらいの。てか、お前のところにも似たようなのいんの? 」
「おう、俺が入る前からからいるらしいんだよ。いらっしゃいませおじさんが。棚を整理整頓しながら、ずっといらっしゃいませ言ってんだ」
「え、待って」
口を開いたのは美保だ。
「私今ドラッグストアに勤めてるんだけど、似たようなのいる。いらっしゃいませおばさん。やっぱり品物整えながらいらっしゃいませ言ってるの」
「なんだか気味が悪いな」
「案外Twitterとかで話題になってたりして」
松村は焼き鳥の棒で宙に円を描きながら、冗談めかして言う。
「まさか」
荒木は鼻で笑った。
「ま、見てみよう」
中島がタブレットを取り出し、テーブルの真ん中に置いた。
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