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「聞いてます? 志崎さん」
「ああ、ごめんごめん。聞いてる」
「本当ですかあ?」
目の前の女性、向居千奈は疑わしいと言わんばかりに眉をしかめた。
愛称・むかいち。23歳。ちょうどオレと20歳離れていることになる。娘でもおかしくない年齢差。
「志崎さん、イマイチわたしに興味を持ってない気がするんですよね」
「持ってるよ……。だからいきなり呼び出されてもちゃんと来てるわけだし。で、何、今日は。誰と誰が揉めてケンカしてるんだ?」
「グループ内のゴタゴタなんてどーでもいいです」
えええ。
どうした、むかいち。
アイドルグループ・星屑ティアラのボーカル担当、歌唱力で他を圧倒し20歳を超えても22歳を超えてもメインメンバーから降格しなかった星屑ティアラの生き字引、むかいち。長くいるから愛着もあるのだろう、グループの平和を誰よりも願うお姉さん的存在。
そのむかいちが、グループを「どーでもいい」だって?
「そんな言い方ないだろう。君らしくないぞ、むかいち」
オレはむかいちをたしなめた。
一応、サブマネージャーだし。
オレの言葉にむかいちはそう?と首をかしげた。
顔の輪郭にそって整えられた髪が揺れる。黒のミディアムボブ。
「志崎さん。私は、決心したんです」
「え?」
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