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「意地でも、私に興味を持ってもらいますから」
「いやだから、興味持ってるよ。サブマネージャーだから当然だよ」
「それじゃ足りません。私のこと、アイドルとしか見てないですよね」
「むかいちはアイドルだろ」
だから周りの目がないカラオケルームにいるんだぞ、むかいち。
個室居酒屋でもよかったし、どこかのレンタルルームを借りてもよかったが、むかいちは歌える場所の方が好きだろうと、ここにした。
フードメニューもまあまずまずなところを選んで、とりあえず何か食べながら。
むかいちは恐ろしい勢いで食べきった枝豆のからを前に、オレに訴えた。
「そんなんじゃダメです。足りないんです」
だん、と机を手のひらで叩いて、こちらに身を乗り出す。
歌唱力採用とはいえ、むかいちもアイドルだ。顔の造作は、並以上。
大きな黒目でじっと見つめられる。
丸いほおが室内の照明で光る。
「わたし、志崎さんにもっとちゃんと見られたいんです」
流行りのリップグロスに彩られた唇が、オレに訴える。
若い女のパワーをいちいちまともに食らっていたら、アイドルのマネージャーなんてできない。精神が持たない。
けれどたまに、オレが心の中で引いている規制線を超えて突進して来る子もいる。
まさかでも、むかいちが?
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