隣同士のきっかけは

8/9
前へ
/9ページ
次へ
運も才能もなかった。 「そうだよ。あいつの本に書いてある通りだ」 オレが言うと、むかいちは唇を引き結んだ。ぎゅっと音がしそうなほど。 「志崎さん」 むかいちは俺の名を呼び、息を一つ、つくと、 「もう1度言います。相方にしてください」 と言った。 恋焦がれる目。 漫才に、そして賞レースに恋をしている目。 多分、昔、漫才賞レースに出ていた頃は、オレもこんな目をしてたであろう。 今でもこんなに執着して、忘れられないでいるということは。 「本気か。本気なのか、むかいち」 オレの問いに、むかいちは、 「志崎さん。夢を叶えるにはどうしたらいいと思いますか?」 と、逆に問いかけてきた。 「夢を叶えるには……?」 「夢が叶うまで夢を追うことです」 むかいちは、単純でしょ? と笑った。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加