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「友達と来た時、柚希ちゃんって呼ばれてたのが、耳に残っちゃってて……馴れ馴れしくごめん。
……でも、お陰で最近元気ないな、って気づけてよかった。柚希ちゃんのこと、少しは励ませた……よな?」
頬を軽くかいて、矢代さんは私に伺うように首を傾げた。
勿論私は即座に、何度も頭を縦に振る。
「すごく励まされました! 上手く言えないけど……矢代さんのお陰で、私また、頑張れそうです!」
ぐっと、拳を作って微笑むと、矢代さんもやっと照れるのを止めて、同じように笑い返してくれた。
「そっか、助けになれてよかったよ」
「はい、本当にありがとうございました!
パンも、あったかくて美味しかったです。あと……抱き締めてくれて、なんか、ほっとしちゃいました。人肌って、落ち着くんですね」
へへへ、と今度は私が照れて俯くと、矢代さんは口元を手で覆って、何故か天井を仰いだ。
「矢代さん?」
「な、んでもない。柚希ちゃん、それってちょっと、ズルイよ。……おいおい可愛すぎんだろ」
俺、コーヒー入れ直してくる、と矢代さんは席を立った。
後ろから見ると、彼の耳は真っ赤になっていた。
釣られて私も、自分の頬が紅潮するのが分かった。
だって、年下の子供を慰めるつもりでしてくれたんだと思ってたのに、あんな風に照れるのって、まさか……。
そう考えながらさっきの抱擁を思い出すと、顔から火が出るほど恥ずかしさが増して、爆発するかと思った。
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