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パン、美味しいなぁ
このパン屋さんには、イートインスペースがあるのだった。
「コーヒーですか? 紅茶?」
「あ、コーヒーでお願いします……」
制服姿の年下に、店員さんは愛想良く聞いた。
私は申し訳なくて、だけど目の前に置かれたパンに意識が飛ぶのを抑えられなかった。
お腹が空いていた。とても。
「はい、どうぞ。パンはどれにします?」
「え、と、クリームパンに、します……」
店員さんは、さっきお願いしたコーヒーとクリームパンをトレーに載せて、私に差し出してくれた。
あれこれしてくれるのが申し訳なくて、あとまたお腹が鳴りそうだったので、誤魔化すために口を開いた。
「もうすぐ、閉店だったんですよね? 本当にいいんですか……?」
「いいんですよ、外に出たらパンも冷えちゃいますし。何個でも食べて行ってください」
さあ、とパンを示されると、いよいよ手を伸ばすしかなくなる。
クリームパンを手に取って、ゆっくりと口に含んだ。
――おいしい。
表面の艶艶した茶色の皮を、つぷりと歯で裂く度に、中から蕩けるようなクリームが現れて、舌の上に広がる。
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