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残り半分になった辺りで、敢えて苦いコーヒーを飲んだ。それからまたクリームパンを食べると、再び新鮮な甘味が口の中に広がる。
「ふぁー……」
やがて、クリームパンがなくなってしまうと、血糖値が上がりだしたのか、体がポカポカしてきた。心にゆとりが出来て、脳の回転が良くなった気がする。
そんな時、ピロンとスマートフォンの音が鳴る。SNSの着信音だった。
『模試の結果どうだった? 私ビミョー(´・ω・`)』
たちまちの内に、胸に苦くて重い何かが居座ったように錯覚した。ただの錯覚なのに、息苦しくなった気がして嘆息する。返事なんてしたくない。面倒臭いから。
電源を切って、数秒目を閉じる。それから、パンの袋に手を伸ばして、中のパンが何かも考えずに、びりびりと口を開く。
「ん、ぅ」
勢い良く突っ込みすぎて、くぐもった声が出た。
それでも止まらず、コーヒーで流し込む。目頭が熱くなるのを感じながら、パンを急いで食べていく。理由も分からず泣いてしまいそうだった。
「……どう、したんですか? 何か悩み事?」
「……大したことじゃ、ないです」
胸の内から何かが破裂しそうになった。口を素早く噤んで俯く。間違って何かを口走らないように。
「でも、泣いてる」
硬い指が、いつの間にか頬に伝っていた涙を掬ってくれた。
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