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「わ、たし、今日模試が帰ってくる日で……もうすぐ本番なのに、『E』判定だったんです」
いよいよ本気で泣き出した私を見て、店員さんはちょっと目を見開いたが、私の頭を控えめに撫でてくれた。まだ随分若い人だから、共感してくれてるみたいだった。
「そっか……頑張ったのに、結果が良くなかったから落ち込んでる、って感じかな? でも、まだ分からないよ。運で受かる人も、実際に沢山いるから」
「運じゃ、ダメなんです。私が目指してるの、国公立の大学で……それで、に、二次試験で、筆記があるから、記号問題みたいに四択じゃ、なくて……」
ぽたぽたっと涙が落ちる。拭いながらバカ真面目に説明していると、自分が急に滑稽に思えて、カッと頬が熱くなった。
何を話しているんだろう。きっと迷惑だ。早く、泣き止まないと。
「……わっ、たし、ほんとは何処にも行きたくなくて、将来の夢とか、なくて。
お母さんとかが、国公立に行ってって、言うから、すごく頑張って……」
頑張った。頑張ったのに。
好きな本も、音楽も、友達と遊ぶのも全部止めた。
塾の先生に、「お前なら、相当勉強すればやれる。頑張れ」って皆の前で言われてしまった。
だから、だからいっぱい勉強したのに。
「でも、ほんとは、無理だろうなぁ、って分かってて」
他の、私よりも勉強時間が少ない子が、私よりもいい点を取るのを何回も見た。
学習能力とか、そういう生まれつきの容量の良さ。
そういったものが私には足りないのだと、気付いていた。その分勉強したけれど、きっと無理だと薄々分かっていた。
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