パン、美味しいなぁ

5/12
前へ
/16ページ
次へ
 「模試が、返ってきて、やっぱり、私じゃ……っ、むりだな、って分かって。  その瞬間、なんか、ぜんぶ――めんどくさく、なっちゃって」  5番目のアルファベット。  それを見た途端、お腹や胸に穴が空いたみたいな感触がした。  五感が希薄になって、頭が真っ白になった。  ――面倒臭い。  何かを思うより先に、そうラベルを貼った。自分の内に留められる限界まで溢れた感情を一緒くたにして、大きなラベルで一つに纏めた。  考えたくなかった。だって面倒臭い。思い出したくなかった。何でか涙が出そうで、面倒臭いから。  「全部、全部が、めんどくさく、なっちゃって」  俯いて、ぐしょぐしょの袖で目を擦った。店員さんは眉を顰めてそれを止めて、私の頬の涙もハンカチで拭ってくれた。  それから、真っ直ぐに私の目を見て、口を開いた。  「なぁ、違うよ」  「……なにが、です、か?」  「それって、面倒臭いんじゃないよ。もっとよく、目を逸らさずに考えてみて」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加