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--終わりと始まりの音を聞く--
(後日談)
卒業式だった。
前会長である、冬夜(とうや)先輩は今日でこの学園を卒業する。
先輩の答辞は堂々としたもので、卒業生も在校生もすすり泣く音が漏れていた。
俺は泣かなかった。
泣けなかった。泣く資格も無かったんだと思う。
今年は例年より早く桜が開花してもう満開に近い。
満開の桜の下で、先輩は親衛隊だった先輩方と写真を撮っていた。
これから謝恩会のような卒業パーティーも執り行われるらしい。
前生徒会の最後の仕事として、これから準備に行くのだろう。
目を細めて、先輩を瞼の裏に焼き付ける。
今日で、最後だ。
ここを卒業してしまえばもう二度と会うことも無いだろう。
そんな、何の繋がりも無い関係だった。
ザッと風が吹いて、それで先輩と目が合った。
会長は外にいて俺は空き教室だ。
俺に気が付いたことに驚いた。
「秋月!!」
会長は俺の名を短く呼ぶと、こちらへ向かって走り出した。
動けない。
どうせ最後なんだから、という気持ちと、最後だからこそという気持ちがグルグルと胸の奥で渦巻く。
息を切らせた先輩がここに到着するのにさほど時間はかからなかった。
その目は、真剣そのもので息をのんだ。
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