できそこないの悲劇

　世界中の人が知る悲劇。同じ国に生れながら、敵対する家の相手と恋に落ちた男女。叶わぬ願いを持ってしまった二人は、協力者の助けを得ながらもすれ違う。結末は男の服毒自殺と、女の短剣を使っての後追い自殺。
　叶わぬ願い、届かない相手への恋という点では私も同じ。けれど私のそれは、そこまで大それたものじゃない。許嫁に夢を見て、本当の愛を知った時には家柄の違いに阻まれてしまったというだけの話。
　私のお話は、悲劇にもなりきれない。

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　運び込んだ大量の花と荷物の入った段ボールを見て、ほっと一息つく。手に持ったリストと照らし合わせて過不足はなく、きちんとそろっていることに安心する。顔をあげると、開け放たれたドアから青い海が見える。空も綺麗に晴れ渡り、結婚式を挙げるには絶好の日和と言っていいのだろう。
　ドアからベランダに出て、手すりにそっと寄りかかる。今日は物置と化しているこの部屋も、平時は中小規模の宴会が催せる部屋だ。さすがに大広間のバルコニーほど広くはないけれど、このベランダからも綺麗な景色を眺めることができる。