0人が本棚に入れています
本棚に追加
お相手の人たちは?」
「公太様と水上家の方々はあと一時間ほどで到着の予定です。あちらもそれなりの準備できますから、早くなることはないですよ」
「そうですか」
頷いて、すっと顔を逸らす。美浜市の隣にある大川市、その名家である水上家はこんな時代になっても市政に影響力を持っている。美浜の旧名家である結城家にとっては、水上家との縁を強いものにすることは重要な意味を持つ。
「それでは、そろそろ旦那様のところに行ってまいります」
にこりと微笑んで、木乃衣はそう言った。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
また互いに頭を下げて、木乃衣はすぐに部屋を出て行った。もうしばらく仕事まで時間がある。だからもう一度、備品の確認をしておこう。
***
「旦那様、お嬢様がお呼びです」
そう声をかけると、自身の控室のソファーに深く座っていた吉家は怪訝そうな顔を向けてきた。
「こんな時間にか? 何の用だ?」
「式が始まる前にお話ししておきたいことがあると。詳しいことは私も聞いてはおりません」
「ふん。式の準備は?」
最初のコメントを投稿しよう!