できそこないの悲劇

4/16
前へ
/16ページ
次へ
 お相手の人たちは?」 「公太様と水上家の方々はあと一時間ほどで到着の予定です。あちらもそれなりの準備できますから、早くなることはないですよ」 「そうですか」  頷いて、すっと顔を逸らす。美浜(みはま)市の隣にある大川(おおかわ)市、その名家である水上(みずかみ)家はこんな時代になっても市政に影響力を持っている。美浜の旧名家である結城(ゆうき)家にとっては、水上家との縁を強いものにすることは重要な意味を持つ。 「それでは、そろそろ旦那様のところに行ってまいります」  にこりと微笑んで、木乃衣はそう言った。 「よろしくお願いします」 「こちらこそ、よろしくお願いします」  また互いに頭を下げて、木乃衣はすぐに部屋を出て行った。もうしばらく仕事まで時間がある。だからもう一度、備品の確認をしておこう。       *** 「旦那様、お嬢様がお呼びです」  そう声をかけると、自身の控室のソファーに深く座っていた吉家(よしいえ)は怪訝そうな顔を向けてきた。 「こんな時間にか? 何の用だ?」 「式が始まる前にお話ししておきたいことがあると。詳しいことは私も聞いてはおりません」 「ふん。式の準備は?」     
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加